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水循環の明るい水来(みらい)へ「砂漠と水−タクラマカン砂漠−(前編)」

水循環の明るい水来(みらい)へ

1.はじめに

古代よりヨーロッパと中国を結ぶ通商路として栄え、多くの人、
物が行き交ったシルクロードに、現代人はある種のロマンを感じるものです。
中国側の出発点は、昔の都、長安(現在の西安)で、図1に示すように、
ここから西に向かい、蘭州を経て敦煌に至る河西回廊を通過します。
敦煌で、崑崙山脈の麓に沿って、タクラマカン砂漠の南側を通り、カシュガルに至る
西域南道と北回りに分かれます。
北回りは、トルファンで天山山脈の南側を通りカシュガルに至る天山南路とウルムチを通り
天山山脈の北側を行く天山北路に分かれます。

この敦煌から西、タクラマカン砂漠周辺の地域は、現在新疆ウィグル自治区と呼ばれ、
漢民族とは異なるイスラム教徒、ウィグル族が暮らしています。
中国の西の果てカシュガルから更に西へキルギス、ウズベキスタンなどの中央アジアの
国々を経て、イラン、シリア、ギリシャ、ローマに至る道となります。
この経路内の往来が、これらの地域に様々な民族の交流を生み出し、
顔立ちもまた様々な人たちが暮らしています。

中国内シルクロード経路
風の旅行社WEB:中国シルクロードのルート・町紹介:天山南路編より引用
図1 中国内シルクロード経路

2.タリム河水系

下記の図2はタクラマカン砂漠周辺の主要河川、タリム河水系の河川を示しています。
天山山脈、崑崙山脈など周辺の高山の雪解け水がタリム盆地(タクラマカン砂漠)に
流出します。図中のヤルカンド河、ホータン河、タリム河が途中から点線になっているのは、
雪解けが進むに従い流路が徐々に伸びていってることを示しています。

近年、地球温暖化の影響からか、流量の減少が著しく、流路の伸長も不足がちになっているようです。
筆者が現地を訪れたのは、2002年6月下旬で雪解け水が豊富な頃なのでタリム河の下流地域では、
写真1のように豊富な水が流れていました。

滔々と水をたたえるタリム河(2002.6.22撮影)
写真1 滔々と水をたたえるタリム河(2002.6.22撮影)

これらの河川が山地から平野部に流れ出る手前に、治水、利水を目的として、
いくつかのダムが建設されています。ちょっと考えると、普通、砂漠にダムがあるとは
思いもよらないのですが、周辺の高い山には、雪が降り雪解け水による洪水が起こるので、
ダムが必要となります。
また、砂漠の乾燥地域では水が大変貴重です。
従って、利水目的のダムも必要となります。
そのようなダムの例として、図2にキジルダムとウルワティダムの位置を▲で示し、写真2、
写真3に各々の現地撮影写真を示します。

図2キジルダム(木扎提河)
図2 キジルダム(木扎提河)

キジルダム(木扎提河)
(主ダム)
堤長:928m  堤高:44m
(副ダム)
堤長:1300m  堤高:32m
コンクリートでライニングしたアースダム、貯水容量:6.4億m3

写真2 キジルダム(2002.6.21撮影)
写真2 キジルダム(2002.6.21撮影)

ウルワティダム(墨玉河中流)
堤高:138m ロックフィルにコンクリート被覆
貯水容量:3.47億m3(1995年~1997年)

写真3 ウルワティダム(2002.6.23撮影)

忌部氏写真