水循環の明るい水来(みらい)へ「健全な水循環」
前回のコラムで、水循環について取り上げましたが、
水は当たり前のように自然の循環を繰り返しているものです。
最近、水循環に「健全な」を付けて、健全な水循環の必要性が問われるようになっています。
健全な水循環とは、いかなる状態を言うのでしょうか?そのお話を進めるために、
まず何故この言葉が必要とされるようになったかを説明致しましょう。
人間は水なしでは生きていけません。人間生活が向上するに従い、
水は様々な形で利用されてきました。飲み水はもちろんのこと、洗濯、料理および
食器などの洗浄、住居の清掃、車の洗浄、風呂水、水洗トイレ、植栽への水やりなどです。
特に都市においては、人口増に伴う水需要の増大が自然の水循環を歪めてきました。
図1は都市の水循環の模式図です。この図の着目すべき点としては、
青色の矢印で示す自然の水循環ばかりでなく、ピンク色の矢印で示す人工系の水循環、
すなわち流域内外からの給水、流域内外からの汚水と下水処理、地下水の汲み上げ、
工業用水などが混在していることです。
人間は大量の水を使い、その水を汚してきました。
都市の発展に伴い、水循環の悪化が叫ばれるようになり、以下の課題が指摘されています。
① 平常時の河川流量の確保
② 洪水時の河川流量の制御
③ 地下水などの水資源の保全と開発
④ 生態系の保全と復元
⑤ 汚濁物質の制御
⑥ 都市気候(熱環境)の改善
既に出来上がった都市を昔の自然状態に戻すことは出来ません。
我々は、都市の生活形態を変えることなく、健全な、都市化以前の水循環を取り戻すことが必要とされています。
図2は、健全な水循環の視点を示しています。
① 図中の3つの行動(取り組み)は、歪んだ水循環システムの改善に結びつく行動として示しています。
② 3つの円が重なる中央部は、人間が自然と共存するバランスの取れた水循環システムを示しています。
③ 健全な水循環システムは、私たちが行動を起こす取り組み対象としてだけでなく、
触れてはいけない自然の水循環部分を含んでいます。
この部分は、3つの円の外側の緑色の領域として示されています。
図2 健全な水循環の視点